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もうひとつの世界のお話し②

全然短くならなかった^^;
続きから、完結です。



思えばボルトが父に反抗的に育ったのは
かまってもらえない寂しさ、などだけではない。
仲の良い、愛し合って結ばれた父と母なのに
いつも小さな違和感があり、そうしたものが
ふと表にあらわれたときの、やるせなさ、苦しそうな顔
そういった時、父は仕事にかこつけて家を出ていく。
残された母は、ただ静かに、感情をもらさぬように耐えていた。
なにがあったというわけではない。
ただ、時々、不意に父と母の間に薄暗い影がさすのだ。
父はそれから逃げ、母は置き去りにされる。
母を父が苦しめているのだとボルトは思い、父に反抗するように
なっていた。

********************************

長じて、日向ネジの死んだいきさつを知り
ようやく父と母の間にある薄暗い影がなんなのか
わかった。
日向ネジは、戦争で、父と母をかばい、死んだのだ。
その死にざまは酷く、死体も塵となって回収不能であったという。
里にある日向ネジの墓には、遺品が収められているだけなのだ。
それは、彼の父親、ヒザシ同様で、形だけの墓でしかなかった。

「ばあさんが、しきりにあやまっているのは
死んだ従兄になんだろうな……」

そうだろう?親父。と、ボルトは後ろを振り返った。
いつの間にいたのか、年老いても逞しい火影がそこにいた。
だが、その表情は疲れ切っている。長年連れ添った妻が
死の床についているのだ、憔悴しきって当然だろう。
くまのできた顔で、彼はボルトを見上げると、息子の問いに
大きくため息をこぼし、「だろうな」と答えた。

「オレと母さんをかばって、ネジは死んだんだ。
なのに、オレ達は、結局、ネジのためになんにも
できなかった。日向一族を変えることも、なんにもだ。
オレは火影として、里のこと、母さんは家族のこと
それだけで、精いっぱいだったんだ。」

自分たちの幸せを守ることだけで、精いっぱいだったんだ

うなだれる火影をみて、ボルトはやるせない気持ちになった。
いつも強がりばかり言い、それを実現させてしまう父親だった。
弱音を吐くことは、ほとんどなかった。

「それが・・・親父と母さんの影・・・いや、後悔だったんだな」

病院の長椅子に腰をかけ、うなだれていた火影が小さく震え続けた。
声を殺して嗚咽している。そうして、彼は声を絞り出すように言った。

「そ…うだ、でっけぇ後悔だ……今でも……どうしてオレは……っ」

(デキタノニ……本当ハ…ネジヲ蘇生サセル事ガデキタノニ……)

「今でもわからねぇ……どうしてオレは、のうのうと生きてるんだ?」

涙が、彼の膝に落ち、じわりと染みが広がった。もう言葉も発せず
彼はひたすら、声を殺し嗚咽した。

そんな父親を見て、ボルトはどうしたらいいのか迷い、逡巡したあげく
ただ、静かに黙って彼のそばに立っていた。


************************************

(ネジ兄さん…?)

目が覚めると、なんだか体がとても軽く感じられた。
ヒナタは、ゆっくりと上半身を起こすと、ベッドの傍に
佇んでいる、従兄に微笑んだ。

「ネジ兄さん、今日は何の修行をつけてくれるんですか?」

優しくなった従兄は、任務のない日は毎日のように
ヒナタの修行に付き合ってくれる。
今朝も、その心づもりのようだ。修行用の衣服を着ている。
秀麗な顔立ちに、静かな笑みをたたえて、彼が答えた。

「そうですね、どうしましょうか?ヒナタ様。」

では、まだ習得できていない回天の修行を、とヒナタが言うと
ネジが、ああ、まだ習得できてないんですね、と少し寂しそうに
微笑んだ。それに、小さな違和感をおぼえ、ヒナタは考え込む。

(あれ?ネジ兄さんが、どうしてここにいるの?それに私の
この服…入院患者の服みたい…そういえば、ここは病室じゃない?
あれ?…いまは、いつだっけ?私は、なんでここにいるの?)

ふと目をやり、持ち上げた両掌をみて、ヒナタは驚愕した。彼女の手は
皺だらけで、とりの骨のように痩せきっている。髪を撫でて、肩から胸先に
引き寄せれば、艶やかな黒髪ではなく、白髪の入ったごわついた髪だった。
そこで、急激に彼女は覚醒した。そして、あるはずのないモノに目を向ける。
夢、まぼろしではなく、彼はまだそこにいた。
懐かしい思い出の中だけで生きていたネジは、セピア色の写真のように
ぼんやりとした記憶の姿でしか思いだせなかったのに
今、年老いたヒナタの前にいるネジは、鮮烈なまでに若々しいあの頃のままの
ネジだった。

「ネジ…兄さん……」
あの世にいったら、彼にあえたら、必ず言おうと思っていた言葉が続かない。
私を宗家の嫡子として、守ってくれたのに、ネジ兄さんの遺志を台無しにして
ごめんなさい。自分の幸せばかり考えて、ネジ兄さんを忘れてごめんなさい。

ヒナタは自分の情けなさに涙があふれだした。こんなときでもなんて浅ましいのだろう。
ネジに会えた感激よりも、自分のいたらなさに涙するなんて……
吐き気がする、自分への嫌悪にさいなまれ、ヒナタは肩を震わせる。

すると、やさしく肩に手が置かれ、驚いて見上げれば、ネジが優しく微笑んでいた。
いつも厳しい表情で、めったに微笑んでくれない従兄だった。
そうだ、彼が本当に、いたわるように微笑んでくれたのは最期のときだけだった。

(ネジ兄さん!!)

どうして忘れていたのだろう?あの、死の瞬間でさえ、ネジはヒナタをおもいやり
大丈夫だと微笑んで逝ったのに。自分は、その想いを受け止めることが怖くて
無意識のうちに、すべてをナルトに、心も意識も向けてしまった。
ネジに一切触れることなく、あの戦争の衝撃で二度と彼の遺体をみることもなくなったのに。
あのときの自分の行動、意識、それこそが、最大の罪だったのだ。
そして、それが彼女の最大の後悔であった。

「私は汚いでしょう?…ネジ兄さん…あなたの言った通り
おごりたかぶった宗家の者でしか、なかったんですよ…」

なのに、こんな私のために、あなたは死んでしまった

「ずっと、心の底にネジ兄さんがいました……あなたがいないと知っていても
お墓を参らずにはいられませんでした。でも、それは自己満足でしかない…っ」

また涙があふれだし、年老いた老女は背中を丸めて嗚咽した。
その背中を、優しくさすり、年若いネジが心配そうに、彼女の顔を覗き込んだ。

「ヒナタ様、泣かないでください。やっぱりあなたは優しすぎる。あれは
戦争だったんだ。あなたが気に病むことなど、ないんだ。」

「ネジ兄さん……」

「オレは、あなたとナルトを守れて満足している。いい人生でしたよ。」

ただ、二人がオレのことで苦しんでいるのを見るのは辛かった、言葉が通じれば
いいのにと、何度も思った、と、ネジは笑った。

「でも、これからは、たくさんあなたと話ができるし、誤解もなくなる。」

若々しい青年のまま、ネジが年老いたヒナタの手を取り、立ちあがるように促した。
不思議な事にどこも痛みはなく、たくさんついていた管もない。
振り向けば、たくさんの管に繋がれて横たわる自分の姿がみえた。

少しとまどうヒナタを支えるように立っていたネジが静かに言った。

「さあ、いきましょうか。なに、あとからアイツもやってきますよ。
あちらでは、あっという間のことだから、寂しくないですよ。」

「そう…そうですね。じゃあ、連れて行ってください。
 お願いします、ネジ兄さん…」

と、自分の孫ほども若い相手に、兄さんも変ですね、とヒナタが笑うと
ネジが嬉しそうに微笑んだ。

 ― 年老いても、ヒナタ様は可愛い子ですよ、父上 ―――

*********************************

「最期、母さん、微笑んでいたなぁ……」

立ち上る煙を見上げて、火影がぼそりと呟いた。

「おばあちゃん、誰かに許してもらえたんだね。
ごめんなさい、って、ずっと言ってたけど
笑ってたなら、きっとそうだよね?」
泣きはらした目で、ボルトの娘が、彼の手を握り
彼を見上げて言った。
それに、ボルトは母の満足そうな死に顔を思い浮かべ
心から、「そうだよ」と答えたのだった。
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