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もみじ~悲しいお話し~

過去携帯サイトの短編小説を再UPします。
今回、悲しいお話しなので
苦手な方は気をつけて下さい。






「もみじ」

ちいさな命。だがかけがえのないものだった。

「…ヒナタ様。」

背中越しに夫の声がした。だがヒナタは振り返ることが出来なかった。

「…ヒナタ様。」

又、静かな声がした。でも振り返れない。

はぁ…と小さな溜息が聞こえた。

「ヒナタ様、…あなたは声を殺して泣くのか?」

ぎゅっと背中から抱き締められた。
硬く強いネジの抱擁はヒナタと同じ悲しみを抱えている。
同じ痛みを分かちあう唯一の人間。
それまで必死に押し殺してきた嗚咽が、
とうとう抑えきれなくなって、
ヒナタは声を上げて天を仰ぐように泣いた。

「ああっ…ああああっ!」

黒い着物がネジからの強い抱擁に崩れても、
ネジの喪服の袖がヒナタの涙に濡れても。
二人は沸きあがる悲しみに逆らえず、
慰めあうように抱き合って…深く深く慟哭した。
泣いて泣いて涙も涸れつきて。
それでもこの悲しみは終わる事がないかのようだった。

だが、いつまでも泣いてはいられない。
ネジはヒナタを支えて立つようにうながした。

「…行こう、ヒナタ様。
あの子の骨を拾ってやるのが、
親である俺たちに出来る最後の役目だ。」

深い痛みを秘めたネジの言葉。
生まれてたった2日で逝った二人の子供。
はじめて授かった命だった。

「あの子は天国にいけるんですよね?
…あの子は…天国に…」

「ああ、いけるとも…きっといける…」

深い悲しみを帯びた目で…現実しか認めない夫が
ヒナタの言葉を肯定する。
いや、彼もそれを信じたかったのだろう。

「…そして俺たちも自分の生を終えたなら、
きっとまたあの子に会える。」

涙が滲んでとまらなかった。

日向宗家ではその日、ちいさな命の弔いが
密かにとりおこなわれ。
はらはらと散るもみじの葉に
ヒナタはネジへと縋りついて泣いた。

(もみじのような可愛い手をしてました。
もみじのような小さな手を私へとのばしてきたのに。)

一度として母の乳を吸うこともなく、
衰弱して死んでいった…我が子。

「ヒナタ様…。」

「ごめんなさい、でも私…私…しばらくは…
もみじを見ることが出来ません…できないっ…」

はらはらと散り続ける、もみじの葉よ。
わずかの間にここまでの悲しみを与えて
去っていった我が子のような儚さで。
降り積もるこの悲しみも、お前たちは
ただ無邪気に通り過ぎて散り行くだけ。
あの子のように去って散り逝くだけ…。

でも、…あの子だって悲しかったはず。
一人で逝くのは寂しかったはず。

親を失う悲しみとは違う。
それ以上に身を切られるような痛みにネジは涙が溢れる。

(俺も…俺もしばらくは、
もみじを見れない、見たくない!)

はらはらと散りゆく紅葉に、
二人は涙を流し続けたのであった。


******************************
PC本館の雑記にて作成展示した、ネジヒナ短編です。
とても切ない悲しいお話しなんですが…
自分的にはネジとヒナタの初めての子は
生まれてすぐに亡くなるという設定が
根強くあるんです、実は。
幸せなネジヒナの影の部分という事で・・。
(2006/6/5UP)
******2012/8/5再UP************

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