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過去短編その①「おにぎり」

2006/1/9作成、加筆あり^^
続きよりどうぞv
おにぎり

「ネ、ネジ兄さん、少しいいですか?」
不意にヒナタから声をかけられた。
訝しげに一人稽古に励んでいたネジは彼女へ振り向く。
朝の日課であるヒアシとの稽古。だが今朝はヒアシに用が出来たため、
一人で技の確認などしながら宗家の稽古場で修練に励んでいたのだが。
最近普通の従兄妹として関係が修復されつつあるヒナタから声をかけられた。
おとなしい、伏し目がちな少女。
いつももじもじと恥かしがりやでハッキリしない所が気に入らなかった、
つい最近までは。
だが今は…。
「なんですか?ヒナタ様。」
存外優しい声がするりと出てくれた。それにヒナタが頬を染めて、うん…と口を開く。
自分に頬を上気させるなど、珍しいと思っていたら案の定。
「ナ、ナルト君とこれから任務なの…」
ネジの眉間に深い皺が寄った。


「…そうですか。」
それだけ言うとネジは踵を返そうとした。だがヒナタが、
あのっとネジの服の裾を掴んだので体が硬直してしまった。
何事かと彼には珍しく慌てて振り向けば、潤んだヒナタの大きな瞳と目が合う。
それに心臓がぎくりと鷲掴みされて釘付けになってしまった。
彼女の澄んだ瞳から目がそらせなくなる。
表情ひとつ崩さなかったが内心はかなりうろたえているネジにヒナタが縋るように言った。
「ナ、ナルト君におにぎりを…作ったの…ネ、ネジ兄さんに味見…して欲しくて…」
朝食まだ…ですよね?と恥らいながら言われればネジに抗う術などない。
「…頂こう…」
悔しいが何にせよヒナタのむすんだおにぎりが食べれるのだ。
ネジはヒナタに促されていつもお茶を頂く縁側へと向かった。
「ど、どうぞ…」
躊躇いがちに出されたモノは、ナルトを模したおにぎりであった。
金髪の部分はチーズと卵が交互に飯に刺されてあって。
顔の部分は海苔とか桜でんぶとか色々と装飾されている。
(…なんだかごちゃごちゃしててうるさいな…)
不味そうだと思った。だがネジは顔色一つ変えずにそれを手に取ると口へと運ぶ。
それを期待に満ちた目でヒナタが見詰めてくるのが癪にさわった。
(よほど一生懸命なのだろうな。)
あいつに。
苦いものがネジの中に溢れ出しそうになったが、彼はそれを無理矢理心の底に封じ込む。
惨めになるのはゴメンだ、そう彼の高い自尊心がそれを許さないから。
「ど、どうですか?」
だから、つい冷たく当たってしまった。
一瞬でも自分を掻き乱したヒナタが憎らしくて。
「そうだな、テンテンの握ったやつの方が美味かった。」

あてつけだった。

「そ、そうですか…」
「ああ、あいつの握ったのは、もっとしっかりとしていて
味もシンプルで良かった。これはごちゃごちゃしすぎだ。」
「そ、そうですか…」
しゅんと俯くヒナタにネジは一瞥くれると立ち上がる。
「まあ、ナルトなら美味いと言うだろう。安心して持っていってやればいい。」
そう、いつものように素っ気なく突き放すように言うとそこから立ち去る。
背後で俯くヒナタの表情は分からなかったが、ネジはもう
俺には関係ないとばかりに彼女を振り返る事はしなかった。
(もうヒナタ様の事で心を掻き乱されるのはごめんだ。)
見込みのない相手にこれ以上執着するのは…。
自分はナルトに敵わない。だから余計に、自分を守る為にも
ネジはヒナタへの恋心を殺そうとしていたのだった。

任務で一緒になった憧れのナルトの為に作ったおにぎり。
恥かしかったが勇気をだして差し出していた。
最初、遊びに来たんじゃないと不貞腐れていたナルトだが、
一口おにぎりを口にすると「美味い」と言って沢山食べてくれた。
褒められた上に「いい嫁になるってば」とまで言われて
ヒナタは幸せの絶頂を味わう事が出来た。
同班のキバも同行した3人での任務は無事達成。
満足感に満たされてヒナタは帰途についた。
(ナルト君にいいお嫁さんになれるって褒められちゃった…う、嬉しいな…)
思い出し笑いが込み上がり頬がどんどん緩んでいく。
お嫁さん…大人になればいつか自分も…。
思わず自分の花嫁姿を想像してしまった。そしてその自分の手を取る花婿は…
(も、もちろん大好きなナルト君が…いいなあ…)
だが脳裏に浮かんだのは、憧れのナルトでなく何故か従兄のネジであった。
(えぇ?)
思わず足を止めてしまった。
(な、なんで?!)
自分の想像にうろたえていると背後から声がかかった。

「ヒナタちゃんじゃない?今帰りなの?」

振り返ればテンテンとネジの姿。
それに思わず目を瞠る。
何故か胸がちくりと痛んだ。

日向一族の門ともいえる日向の森。
その入り口にネジとテンテンが二人で立っている。
「今、ネジの家から帰るところなの。
今日は非番だったから二人で修行して過ごしたのよ。ヒナタちゃんは任務の帰り?」
「は、はい。」
明るくはきはきとしたテンテンはネジと仲が良い。
寡黙で一人を好むネジだが唯一彼女とは共に行動していた。
それを今まで何とも思わなかったのに。
だが、今は何故か二人が一緒にいるのを見たくないと強く感じている。
(テンテンの方が美味かった)
不意にあのときのネジの言葉が思い出されてヒナタは目を伏せてしまった。
涙が出そうになったから。
思わずそれを悟られない様にヒナタは俯いて黙り込んでしまう。
それにネジが親族らしく当たり障りのない言葉をかけてきた。
「…ケガもなさそうで良かった。お疲れ様。」
「あ、ありがとう…」
俯いたまま、そう答えるのが精一杯だった。
何故かネジとテンテンの顔が見れない。
失礼かと思っても頭を上げられないヒナタを、彼らは、呆れる事もなく見ていたが。
話しは済んだとばかりに、じゃあ、とネジが言う。
ヒナタへ微笑む事もなく表情一つ変えずに彼はヒナタの横を通り過ぎて行く。
それに、じゃあねとヒナタに笑いかけてテンテンがネジを追いかけて。
遠ざかる二つの姿にヒナタは、胸がキュウッと締め付けられた。


家に帰ってからヒナタは台所でぼんやりと弁当箱を洗う。
大好きなナルトが平らげてくれた弁当箱。
一生懸命作ったヒナタの真心をちゃんと受け止めてくれた。
いつだってナルトは意地っ張りに見えるけど人の真心が分かる人間で…痛みが分かる人間で、優しい。
だから誰より彼に憧れ、慕ってきた。
なのに。
(この切なさは何なのかなぁ…)
大好きなナルトに受け容れてもらえたのに、
ネジからは受け容れてもらえなかった、自分の努力のカタチ。
(ネジ兄さんもナルト君が大好きだから喜んで貰えると思ったのに…)
「ヒナタ、何をしておる。もうすぐ夕餉だ、早く席に着きなさい。」
威厳に満ちた父の諌める声にヒナタは慌てて、はいと返事をする。
母上の手を煩わせるでないと、小言を言われながら父のあとについて廊下を歩く。
食堂にたどり着くまでの短い時間、父の背中にネジの姿を垣間見る。
(ああ、父上とネジ兄さんは似ているんだ…)
厳しい背中。どちらもヒナタを突き放す、甘えを許さない背中。
そこでヒナタは、あっと声を洩らした。
何事かと振り返る父にすみませんと謝って、
そして気付いた考えにヒナタは何度も一人頷いた。

(ネジ兄さんも父上と一緒で卵とかチーズが駄目なのかも…)

そう思えば気がはやり出す。
いますぐ、ネジへと気持ちが焦り出す。

「父上、ネジ兄さんは…あ、明日も朝修練に来られますか?」

思わず父へと確認していた。

「ねえ、ヒナタちゃんて大人しいね。」
「そうだな。」
「ああいう子、ネジの好みじゃない?」
さっき、ヒナタと会って別れてからずっと話題は彼女の事ばかりだった。
上手く隠したつもりでも親友ともいえるテンテンには見抜かれてしまったらしい。
だがそれを簡単に認めるほどネジは素直ではない。
「好みじゃない。」
そうだ、本来ならもっと明るくて自分をしっかり表現できる方が好ましい。
そこでネジはフンと口の端を上げてテンテンへと言ってのけた。
「お前の方が好みだ。」
「あら、ありがとう。嬉しいわ。」
さらりと簡単に受け流してくれる、こういう気を使わない相手が一番楽だ。
だからテンテンとはウマが合うし何より感情が乱されることがないから一緒にいる。
仲間として。
だがヒナタは…。
(くそっ!)
少し彼女の儚げな面立ちを思い浮かべただけで感情がざわめく。
瞑想を好み自分の感情をコントロールするのがネジの第一の修練であった。
感情に流されない強さが妥協を許さないネジの柔拳を磨いてくれた。
だから己を高みに導くにはその鉄の感情を乱すヒナタは妨げにしかならない。
「…好みなんかじゃない。」
思わず又自分に言い聞かすように呟いていた。

「…ナルトに恋でも負ける気?」
テンテンの言葉にネジは息をのむ。
それから不愉快そうに彼女をにらみつけた。
「見当違いな物言いだな。意味が分からない。」
だがテンテンは強気な眼差しで腰に手を宛てながら言い切った。
「ネジは忘れたの?あの試合でナルトに負けたのはネジがかっこつけだからよ。」
「?!」
「かっこつけて澄ましてたからよ。がむしゃらな捨て身さがないからよ。」
「何だと!」
「あの試合では勝ち目がなかったナルトが捨て身で勝った。だから今度は、恋の勝負は」
「…」
「勝ち目がないネジが負かしてやんなさいよ。がむしゃらに。」
「…」
「捨て身で。ヒナタちゃん、振り向かせなよ。好きで仕方ないんでしょう?」
「…」

黙り込むネジにテンテンは苦笑すると「ここでいいわ」とかえす。

「ネジは大事な仲間だから後悔して欲しくないのよ。」
そういって彼女は夕暮れ始めた木の葉の繁華街に消えていった。

街路地に一人残されたネジは、ぼんやりと先ほどの彼女の言葉を反芻していた。

(がむしゃらに)

…確かに自分はそれから目をそむけて逃げていた。

惨めになりたくないからと。

見込みがないからと自分だけでこの思いに幕を下ろそうとしていた。

だが。

それでいいのか?

いつか後悔するんじゃないのか?

何より。

彼女を本当に諦められるのか?

ナルトと結ばれる彼女を見たいのか?本当にそれでいいのか?

何より彼女がナルトへの恋に破れて、誰か他の男と結ばれたら?



どくんと心臓が鳴った。

無理だ――。そんなの我慢できない。

だったら。

「足掻くしかないじゃないか。」

ぽつりと零れた言葉は彼にとってなにより確かな道しるべとなる。

(本当に惨めなのは、何もしないで諦める事だ。)

「ありがとう、テンテン。」

心からおせっかいな友人に礼を言う。
そして自分もいつか彼女の片恋を励まして助けてやれるくらいおせっかいしてやろうと。
彼は小さな笑みを浮かべて空を見上げた。

(明日も晴れそうだな…)

明日からはヒナタへと恋を仕掛けよう、がむしゃらに。
そうネジは澄んだ夕焼け空に密かに誓ったのだった。
--------------------------------------------------------------------------------

次の朝修練での休憩におにぎりが差し出された。
ヒアシと縁側に腰を下ろしたネジはヒナタが恥じらいながら
差し出した盆の上にあるそれに驚いた。

(こ、これは…?)

「・・・・」

見ればヒアシも面食らっている。

ヒアシの様子を窺ってから再度ネジはヒナタのおにぎりへと視線を戻した。

「あ、あの…これ…ネジ兄さんと父上です…」

そういって頬を染めるヒナタに二人は何も言えなくなってしまう。
普段厳しく素っ気無く当たっているが
実はとても彼女を大切に思っている男たちは静かにそれを手に取った。

「これが私か…」

ヒアシは眉間に皺を寄せたままそれを口に運ぶと、静かに頷いた。

それを見てネジもおにぎりを眺める。
自分だとヒナタが言ったそれは海苔だけでネジを模したシンプルなものだった。
「…」
ぱくりと噛めばいい塩梅の塩味が口内に広がる。
具はしゃけだった。

「美味いですよ。」

そういって振り返れば満面の笑みを浮かべるヒナタ。
それに心奪われてネジがしばし呆然と見惚れていると、ヒアシが一つ咳払いをする。

「さて、私は所用を思い出した。ネジ、お前はもう少しヒナタの相手でもしてやってくれ。」

あ、と漏れたネジの声はヒアシから手で制されてそれ以上言葉は紡げなかった。

中庭から完全にヒアシの気配が消えると改めて二人きり取り残された気恥ずかしさに
ネジは柄にもなく俯いてしまう。昨日決心したばかりだというのに、
己の不甲斐無さに歯噛みしたくなった。
「ネジ…兄さん。さ、さっきの…本当?」
「え?」
躊躇いがちにヒナタから声を掛けられネジは顔を上げヒナタを見る。
ヒナタは相変わらずもじもじと指先を絡めながら頬を染めて伏し目がち。
それに幾分緊張も解れたが、代わりにその愛らしさに胸が乱れた音を奏で始めてしまった。
(落ち着け…)
冷静さをなんとか装っていると、時間差なのか漸く彼女が先ほどの会話を繋げる。
「あ、あの・・・美味しいって…父上の前だからじゃなくて…本当に?」
「え?ああ、本当だ。美味かった。」
「テ、テンテンさんのよりも?」
「?」
「あ、あのテンテンさんのおにぎりよりも…?」
そこでネジは思わず息をのんだ。

(ヒナタ様、まさか…まさかとは思うが…
もしかして、やきもちを?…いや、まさかな…)

たんに、自分よりも他のおにぎりの方が美味いと
いわれて、悔しかったんだろう。

(悔しい?)

違和感があった。ヒナタは妹のハナビにさえ
悔しいというそぶりをみせることはない。

じゃあ、やっぱり今の発言は、テンテンへの嫉妬なのだろうか?
さっ、とネジの頬に赤みがさした。

と、その時、ヒナタが俯いたまま、小さく呟いた。

「やっぱり、しゃけより昆布がよかったのかな…?
昆布の方が、忍びらしい色だし…ネジ兄さんは
黒色が好きかもだし…」

ぶっ

おもわずネジはふきだしてしまった。
的外れな、とぼけた事を考えて心配してる
ヒナタが可愛らしくて、笑いがとまらない。

「な、なにがおかしいんですか?」
困ったようにヒナタがネジの肩へと手をかけてきた。
「もう、笑わないで、ちゃんと答えて下さいっ!」
柔らかく暖かいものがヒナタの触れたところから
ネジの中へと広がってゆくような気がした。
だからその小さな白い手に己の手を重ねてネジはヒナタへと微笑んだ。

「ヒナタ様のおにぎりにかなうものなど、どこにも存在しないよ。」

かあっと見る見る真っ赤に染まるヒナタにネジは目を細める。

(俺は捨て身だからな。覚悟してくれ、ヒナタ様。)

心の中でそう呟いて、目の前で焦り慌てるヒナタへとネジは微笑んだ。

その優しい眼差しに、男らしい仕草にヒナタは胸が高鳴る。

「あ、あの…ありがとう…」

小さく答えるだけでも胸がドキドキと高鳴っておかしくなりそうだった。
そのヒナタの精一杯な返答にネジは微かに頷く。

「時々でいいから、又作ってくれると嬉しいのだが?」

「あっ、あのっ…具はしゃけで良かったですか?」

「ああ。好きだよ。」

一瞬、ネジの目が真剣になったから、
ヒナタはその言葉がまるで自分を好きだと言ってるように聞こえてしまった。
ついそんな錯覚を覚えてしまった。

(やっ、やだっ。わたしったら…)

益々顔が熱くなって堪らない。
恥かしさにどうにかなりそうだと焦っているとネジが漸く重ねた手を離してくれた。
ほうと溜息をこぼして、崩れ落ちるようにネジから手を退く。
そうしてぺたりと廊下に座り込むヒナタへと影がさした。
見上げれば朝日の逆光を背にネジがヒナタを見下ろしている。
端整な凛々しい少年は大分大人びて見えた。少し精悍さを増したような気さえする。
やがて形の良い唇が開かれた。

「ではこれで失礼する。また明日…」
「あ…」
「ヒナタ様に会えるのを楽しみにしている。」
「え…」
「俺の励みだ、あなたは。」


遠ざかるネジの気配にヒナタは火照った頬を
両手で押さえながらただぼんやりと俯く事しか出来なかった。

あんなに恐れていたネジへと、どうしてこんなにも動揺してしまうのだろう?

分からない、分からないけど。

(でも、とても嬉しい…)



それから暫く朝修練のお茶請けは朝食も兼ねたおにぎりとなったのだった。



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